震探地形学・サイスミック地形学(Seismic Geomorphology)

提供: 日本堆積学会
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目次

[編集] 概要

 Seismic geomorphologyとは,三次元地震探査データを用いた古地形形態や堆積形態の分類学もしくは解析技術,およびこれから派生する堆積プロセスや地層形成過程の研究を指し(Posamentier and Kolla, 2003; Posamentier, 2004; 高野, 2006;高野ほか, 2006;Posamentier et al., 2007;高野・辻, 2013),日本語では,「サイスミック地形学」もしくは「震探地形学」と訳される(高野, 2006; 高野ほか, 2006;高野・西村, 2009)。研究者によっては,同様な概念・手法を「3D seismic stratigraphy(三次元震探層序学)」や「seismic sedimentology(震探堆積学)」と呼称する場合もある。

[編集] 歴史的背景

Seismic geomorphologyは,1980年代後半から90年代にかけての三次元地震探査技術および三次元可視化技術の進展と,堆積システムやシーケンス層序学などの堆積学概念の進展が融合することによって,1990年代から2000年代にかけて進展した手法・概念である(Posamentier and Kolla, 2003;高野, 2006; 高野ほか, 2006;高野・西村,2009)。

[編集] 特徴

 ソフトウエアを用いた三次元地震探査データのseismic geomorphology解析によって,河川チャネル,クレバススプレイ,開析谷,海底チャネル,氷河削痕,斜面崩壊,海底扇状地,炭酸塩岩リーフ,シーケンス境界面地形などの地形・堆積形態や堆積過程の克明な復元と三次元的表現が可能である(Davies et al., 2004)。地表地質,坑井,二次元地震探査データを用いた解析では,データ欠如部の推定を行う必要があるのに対し,三次元地震探査データを用いたseismic geomorphology解析では,連続的な形態表示や堆積プロセス解析を行うことができる。また,表示される形態のみならず,震探属性値(seismic attribute)を用いることによって岩相や物性情報を得ることができるため,正確精緻な性状分布解析を必要とする資源開発の使途においても大きなメリットがある(高野・西村,2009;高野・辻, 2013)。加えて,解析対象に時間層序学的概念(シーケンス層序学)を与えることによって,堆積体の堆積プロセス,分布形態の時間変化,層序学的方向(上位,下位)への積み重なり様式の検討を行うことも可能である。さらに,seismic geomorphology解析によって,堆積物や地質構造の形態・規模・物性の定量値を取得できることから,従来定性論的議論が主体であった地質学や堆積学に対して定量的議論・解析の手段を与えたという点においても大きな意味を持つ(高野, 2006;高野・辻, 2013)。

[編集] 解析手法

 Seismic geomorphology解析の主要方法として,タイムスライス解析,ホライゾンサーフェス三次元表示解析,ボリューム解析,サイスミックファシス(震探相)解析等を挙げることができる(Posamentier, 2004; Posamentier et al., 2007;高野・西村, 2009)。タイムスライス解析は,三次元震探データボリュームを水平方向(つまり走時軸(z軸)に垂直な平面)にスライスしたもので,チャネル等の摘出に適している。ホライゾンサーフェス三次元表示解析は,地震探査データ上の反射波の連続が示す層準面の直接三次元可視化,あるいは層準面上への震探属性値のオーバーレイによって,表面に現れる地形・堆積形状・岩相や物性分布を解析するものである。ボリューム解析は,2つの層準面間もしくはタイムスライス間の震探属性値を調整することで,堆積形態や砂岩の分布を三次元的に解析・表現するものである。サイスミックファシス(震探相)とは,震探反射波群が作る形状の特徴分類であり,堆積体の形状や物性を表すため,サイスミックファシスのマッピングにより,分布解析を行うことができる。

[編集] 文献

Davies, R.J., Cartwright, J.A., Stewart, S.A., Lappin, M. and Underhill, J.R., eds., 2004: 3D Seismic Technology -Application to the Exploration of Sedimentary Basins. Geol. Soc. Memoir, No.29.

Posamentier, H.W., 2004: Seismic geomorphology: imaging elements of depositional systems from shelf to deep basin using 3D seismic data: implications for exploration and development. In Davies, R.J., Cartwright, J.A., Stewart, S.A., Lappin, M. and Underhill, J.R., eds., 3D Seismic Technology -Application to the Exploration of Sedimentary Basins. Geol. Soc. Memoir, No.29, 11-24.

Posamentier, H.W., Davies, R.J., Cartwright, J.A. and Wood, L., 2007: Seismic geomorphology – an overview. In Davies, R.J., Posamentier, H.W., Wood, L.J. and Cartwright, J.A., eds., Seismic Geomorphology: Applications to Hydrocarbon Exploration and Production. Geol. Soc. London Spec. Publ., No. 277, 1-14.

Posamentier, H.W. and Kolla, V., 2003: Seismic geomorphology and stratigraphy of depositional elements in deep-water settings. J. Sediment. Res., 73, 367-388.

高野 修, 2006: 堆積物の分布形態解析における統合的手法論序章−堆積学から震探地形学・地球統計学へのリンク. 石油技協誌, 71, 11-20.

高野 修・荒戸裕之・中西健史・松岡俊文・佐伯龍男, 2006: 三次元地震探査技術の進展がもたらす地質学、とくに堆積学分野へのインパクト.物理探査, 59巻3号.

高野 修・西村瑞恵, 2009:三次元サイスミック地形学(seismic geomorphology)手法による貯留層のイメージングと分布解析:海底扇状地タービダイト砂岩を例として. 石油技協誌, 74, 40-51.

高野 修・辻 隆司, 2013, 石油探鉱開発における三次元地質・貯留層モデリング:堆積学・シーケンス層序学・サイスミック地形学・物理探査学・地球統計学の融合による地質モデルの構築.地質雑,119, 567-579.

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