The Sedimentological Society of Japan

●「日本堆積学会」発足にあたって


日本堆積学会長 牧野泰彦

 堆積学研究会は,2002年11月30日の臨時総会において「日本堆積学会」と名称を変更して再スタートしました.堆積学研究会が学会として再スタートした理由は,1)以前から会員の中に学会にすべきとの要望が出されていたこと,2)2006年に国際堆積学会を福岡で開催するに当り,主催団体として学会であることが重要である,などの事情によるものです.日本学術会議の登録団体にもなり,ロゴマークに夢を託して飛躍的な発展が望まれます.

 岡田博有先生の著書『堆積学』によれば,堆積学研究会は1957年に発足し,休止期をはさみながら1968年に堆積学連絡会として再スタートしました.その後,堆積岩岩石学,堆積相や堆積作用の解明を目的とした研究活動が盛んになり,1971年に堆積学研究会と名称変更し,本来の姿をとりもどしました.本会では,堆積相解析,シーケンス層序学などの新しい概念のもと,さらに現世の堆積過程,実験堆積学,炭酸塩岩の堆積環境などの分野にも研究の活動が広がり,会誌『堆積学研究』の内容も豊富になりつつあります.2002年秋に学会として再スタートし,今後,地質学に基礎を置いた研究者以外の方々とも交流を深めて,研究活動がより活発になり,わが国から新しい研究の芽が生まれることを期待しております.また, 2006年に予定されている国際堆積学会の開催に向けて,わが国の地質・地形条件を活かした独創的な研究が行われ,海外の研究者ともさまざまなレベルで研究協力体制が築かれることを望みます.

 また,学会化にともなって,日本堆積学会はわが国の一般社会で果たす役割を考える必要があります.堆積学分野で,一般社会に関わる問題は少なくありません.例えば,ダムの堆砂問題,海岸の侵食,河川の人為的な流路変更,砂防ダムの建設適否,干潟の埋め立てなど,多くの社会的な問題があります.自然環境の変化を長い時間の中でとらえることは,堆積学や地質学を研究しているわれわれにとって得意とするところです.このような観点から発言して,社会への貢献を果たし,その存在を示すことも重要です.
 学会活動について,会員の方々からのご意見を,ぜひ,事務局へお寄せ下さい.

堆積学研究,第56号,p.1,2003(2003/03/31)


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